フィリピンのビコール地方で出会っためずらしいナッツのお話
見たことのないナッツに出会ったんだって
２０２４年７月に対面で英語クラスを開催した際のおやつに、３月にフィリピンで買って来た「ピリ」というナッツをお出ししたところ、皆さん関心を持たれたご様子でしたので、「ピリ・ナッツ」（pili nuts）について書いておこうと思います。
☟どんなところで取れるナッツなのかがわかる動画も作りました！ぜひご覧ください☟
「ピリ・ナッツ」に興味をもった！もっと知りたい！と思ったら、本文にくわしく書いてますのでお読みいただけたらと思います♪
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「ピリ・ナッツ」との出会い
ビコール地方
２０２４年２月～３月にかけて、フィリピンと行っている国際共同研究活動の一環として現地に出張してきました。ビコール地方へ行った時に「ピリ・ナッツ」（pili nuts）という珍しいナッツに出会ったのですが、これがおいしくて感激！日本ではあまりまだ馴染がないナッツなので、ご紹介します。
ビコール地方は上記の地図で「レガスピ」と表示されている辺りです。
これが「ピリ」
Solong Eco Park and Toursという観光農園でランチをいただいた時のこと。食後に農園の方がこんなナッツを出してくれました。
これが、めちゃくちゃおいしい！！感激して、「これは何？」と尋ねると「Pili nutsだ」と。初めて聞く名前に首をかしげると、この袋を見せてくれました。SALTED GARLIC PILI NUT「塩とガーリックで風味付けしたピリ・ナッツ」とあります。ここで製造・販売している商品のようです。
興味がわいて、しげしげとパッケージを見ていると、加工前のナッツを持って来て見せてくれました。
更に、外殻に包まれた状態のものも見せてくれました。
そしてついには、この殻をナタで割るところも実演して見せてくれることに！！
大きなナタで器用に割っていく様子に目が釘付け。割り立ての新鮮なピリ・ナッツも食べさせてもらいました。何も味付けしてなくても、コクのある風味がすごくおいしいのです！
割っている様子を収めた動画はこちらからご覧ください☟
ピリの木
次に訪れた農園では、なんとピリの木を見ることができました！
わたしがピリにいたく興味を示したことを周りのフィリピン人の人たちが覚えていてくれて、「あれがピリの木だよ」と教えてくれました。屋根より高いピリの木です。
また、何やら木の根元を探して回って、落ちていた実を見つけては手渡してくれました。果肉付のものと果肉がなくなって堅い殻が自然にむき出しになったものと。
そして、「持って帰れ」と幾つか持たせてくれたのですが、種子は、日本へ持って帰ることが出来ない（植物防疫法）だけでなく、フィリピン国内においても、島から島へ種子を持って移動することはできません。翌日は別の島へ移動しなくてはならなかったので、別の農園でもらった生のカカオと共に、ホテルのフロントの方にもらってもらいました。(せっかく持たせてくれたJさん、ごめんなさい😿)
同行のフィリピン人女性Jさんは、この堅い殻に入った状態のピリを、近くにあった石で割って中身を出してくれるんです。すごい！！
殻ごともらったピリも、あらかじめ割ってもらっておけばホテルで食べられたのでしょうが、この時はそこまで頭が回らず。ホテルに着いてから「これどうしよう…。次の島には持っていけないし、ここでは割れないよお～💦残念！！」となったのでした。
「ピリ・ナッツ」とは
「ピリ・ナッツ」は英語でpili、学名をCanarium ovatumという、ムクロジ目カンラン科に属する常緑樹の種子です。ピリの木自体はインドネシアやマレーシアといった東南アジアの国々や太平洋諸島でも見られますが、安定して種子が採取されているのはフィリピンだけ、中でもビコール地方のみとのことです。非常に希少なナッツだそうで、日本ではなかなか見かけることがありません。わたしもビコール地方へ行って初めてその存在を知りました。
フィリピン内ではよく知られたナッツで、特に地元ビコールでは長年伝統的な食材として利用されてきたそうです。現在も地元の農業経済にとって重要な作物であり、多くの家族がピリナッツの栽培や加工に従事しており、地元の人たちからは今後更に盛り上げていこう！という意気込みが感じられました。
ピリは平均樹高20メートルほどにもなる高木です。花は年に何度も咲くそうですが、種子の成熟には時間がかかるとのこと。ピリナッツは商業生産されているわけではなく、マヨン山という美しい火山のふもと、肥沃な火山性土壌の森林で、農薬や化学肥料、灌漑を使うことなく自生しているピリの木から地元の村人によって手摘みされています。（収穫期は5月から10月、ピークは6月から8月）
採取する人はピリの木の高いところまで登って採取し、収穫したピリを1つ1つ鉈で割って中身を出し、加工したり、包装して売ったりします。
果実は直径３～５センチ、重さ２０～４０グラム程度。外側の果肉は最初は緑で、熟すと紫がかった黒色になります。果肉の中に固い種皮があり、さらにその中に茶色の薄皮があって、薄皮の下に柔らかい種子があります。
新鮮な種子は殻とくっついていることが多いそうですが、乾燥させると簡単に剥がせるようになるそうです。乾燥させた殻付きナッツは1年間保存することができるとのこと。
「Pili Hunters」という、ピリ・ナッツをアメリカに加工・輸出している会社のビデオに、ビコール地方・ピリの木や果実・採取する様子がわかる短いビデオがあったので載せておきます。☟
「ピリ・ナッツ」の味
英語でその味をどう表現しているかというと、It tastes like a cross between cashews or almonds and macadamia nuts, 「カシューナッツやアーモンドとマカデミアナッツを掛け合わせたような味」または It has a flavor reminiscent of pine nuts, 「松の実を思わせる風味」というように「カシューナッツ・アーモンド・マカデミアナッツ・松の実に似ている」とするものが多く、中には a shortbread cookie「ショートブレッド・クッキー」と表しているものもありました。
別の言い方をするとsoft and buttery「柔らかくバターのようなコクのある風味」ということで、Pili nuts are delicious.「ピリナッツはおいしい」というのが多くの紹介文で言われていることです。クセが無く、ほんのりとした甘みも感じられる、ほんとうに美味しいナッツです。
食感はというと、They have a melt-in-your-mouth texture.「口の中でとろけるような食感」。
生のままでも食べられますが、ローストすると風味と食感が軽くなります。
売られているピリナッツには薄皮つきのものと薄皮なしのものがあり、薄皮ごと食べると、ほんのりした渋みがアクセントになって美味しいという人もいます。 薄皮にも食物繊維などの栄養がありますので、渋みが気にならない方や、薄皮ありなしどちらも試してみたい方は購入する時に薄皮付を選ぶと良いでしょう。
「Pili Hunters」のサイトでは、「ヒマラヤンソルトやローズマリー、チリなどのハーブやスパイスを軽く振りかけたり、カカオやココナッツシュガーの甘みと一緒に食べると最高」とありました。加工していないピリが手に入ったらそんな食べ方も試してみたいものです。
☟「Pili Hunters」のナッツを取り扱っているサイトが日本にもありました。
 | 価格:9727円 |
「ピリ・ナッツ」の栄養
調べて行くと、ピリ・ナッツは栄養バランスが優れたスーパーフードで、Pili nuts are the healthiest nuts in the world.「ピリ・ナッツは世界で最も健康的なナッツである」と言われていることがわかりました。
その所以は、８種の必須アミノ酸のほか、カリウム・カルシウム・マグネシウム・鉄・マンガン・リン・ビタミンB1・ビタミンＥといったミネラルやビタミンを多く含み、悪玉コレステロールを減らしてくれる不飽和脂肪酸とタンパク質も豊富だから。また、その一方で炭水化物は少なく、カロリーは高いので、数粒でお腹が満たされるため低糖質ダイエット中の方やスポーツ選手のエネルギー源として人気なのだそうです。小腹がすいた時の間食にも良さそうですね。
「ピリ・ナッツ」の用途
【ひとこと：英語を読む力を鍛えよう！】
日本語ではピリについてあまり詳細な情報を見つけることができませんでしたが、英語サイトで探すと多くの情報が見つかりました！
やはり海外の情報を得るには英語サイトで検索するのがよいですね。得られる情報の量が断然多くなります。
ピリはそのまま食べるほか、お菓子や料理の材料として使用されています。キャンディやブリットルのようにキャラメリゼしたり、チョコレートコーティングする他、ピリ・アイスクリームやピリ・プリンを作ったり、ブラウニー等焼き菓子の材料にできるそうです。
☟「ブリットル」とはこんなお菓子です Poppoys Brittle Pili Nuts, Sugar Coated
 | ポポイズ ブリトル ピリ ナッツ、砂糖コーティング 180g (6.4オンス) Poppoys Brittle Pili Nuts, Sugar Coated 180g (6.4oz) 価格:6374円 |
☟サイト「Raw ＆ Wild」より ピリ・ナッツを使ったアイスクリーム・サンドのレシピ（英語）
☟サイト「Pili Hunters」より ピリ・ナッツを使ったお菓子や料理のレシピ（英語）
上記のサイトは米国と英国のものですが、中華圏でも中秋節に販売される月餅のMixed nutsの材料として多く消費されているそうです。
また、ピリは種子だけでなく若芽と果肉も食用になります。若芽はサラダに使い、果肉は緑色の果肉（殻が固まった後、果肉が繊維質になりすぎる前）を漬物にします。熟した果肉はゆでて塩こしょう、醤油かフィッシュソースにカラマンシー（フィリピンでよく使うライムのような果実）の果汁を加えたものにつけてご飯のおかずにします。
ごはんのおかずにする場合は、下の写真のような果肉付のピリを買って来て使うんですね。
YouTubeで「pili cooking 」で検索するとピリを使った調理の様子をあげている動画が多数出てきますよ。
その他のピリの用途をまとまめした。何とも重宝な植物ですね～。
・「トゥロン 」：すりつぶしたピリの穀粒、サツマイモ、砂糖を混ぜ合わせて、ゴマとバニラで味付けし、好みの硬さになるまで混ぜて形作る。
・「プリン」：すりつぶしたピリの穀粒、すりつぶしたサツマイモ、コンデンスミルク、バター、砂糖、卵を混ぜ、バニラで味付けし、薄茶色に焼き色がつくまで焼く。
・エレミ: 樹脂を傷つけると出てくるオレオレジン。フィリピンでは興奮剤、鎮痛剤、抗リウマチ剤として使われる。他の地域では潰瘍性の傷・皮膚感染症の軟膏として使われる。古代エジプトで死者の防腐保蔵に使われたもっとも古い香料の一つで、防腐・抗菌作用があり、現代では若返り効果のあるアロマオイルとしてアロマセラピーに使われることがある。
プラスチック、印刷インキ、香水の製造に使われる。また、スペイン人が船の修理に使用したという。
・油脂：調理油やスキンケア用のオイル（製品化されている）として使用する。石鹸を作ることもできる。
・果皮： 燃料にする他、多孔質で排水性・通気性がよいので土壌改良材やランやアンスリウムの鉢植資材として有用。
・薪： 樹脂を多く含むので、優れた薪となる。
・樹液：新鮮な樹液にも油分が含まれるので着火や燃料として使う。
・木材: 家の骨組み、楽器、箱作りに使う。
・民間療法：穀粒に緩下作用がある。穀粒を砕いた乳剤を乳児のミルクの代用品とする。
「ピリ・ナッツ」を使った加工品
ビコールにはピリ・ナッツを使った加工品がたくさん売られていました。特にビコール空港（手荷物検査を終えたあとのロビー内）にはピリ製品がいっぱい！シンプルにローストしたものというよりは、チリ味をつけたもの、セサミをまぶしたもの、キャラメリゼしたもの等手を加えてあるものが多い印象でした。しかし旅に瓶詰は重いであろう…と思うわたし。
空港で売られているものはこのように種類豊富ですが、空港価格で高いです。断然スーパーマーケットの方が安いのですが、スーパーマーケットにはさほど多くの製品は見かけませんでした。「ローストしただけのピリ薄皮つき」「同 薄皮なし」「キャラメリゼしたピリ」「ピリ入りピーナッツバター」ぐらい。
フィリピンのスーパーマーケットの袋は紙袋。無料です。見た目はかわいいのですけど、何せ薄いのでピーナッツ・バター３個は負担が大きすぎたみたい。ホテルへ帰る途中で破れました…。
わたしが厳選して購入したピリ商品はこちら☟
厳選した商品はどれもおいしかったですよ！
右から： ピーナッツ・バターは（ピーナッツ・バターの本場から来た）アメリカ人の同僚の評価は今一つだったのですが（笑）、わたしには充分でした。
Glazed pili nutsは誰にでも好まれそうな味で、特におみやげにおすすめ！この「growers」ブランドはフィリピン人のお墨付きです。同じものをマニラのスーパーマーケットでも見かけました。
左の二つは、味付けなしの「薄皮付ロースト」と「乾燥させた薄皮なし」版。英語教室のおやつにしたのは「薄皮付ロースト」です。
日本ではまだなかなか目にする機会のないピリナッツですが、フィリピンへ行く機会があれば探してみてください♪
フィリピンへ行く予定はないけど、日本で食べてみたい！という方は前述のアメリカの会社「Pili Hunters」のものを含め下記から購入可能です。
| 価格:9727円 |
 | 価格:3800円 |
| ポポイズ ブリトル ピリ ナッツ、砂糖コーティング 180g (6.4オンス) Poppoys Brittle Pili Nuts, Sugar Coated 180g (6.4oz) 価格:6374円 |
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